ゴミ屋敷化の一因として、多くの人に共通する心理的な癖が「いつか使うかもしれないから捨てられない」という思考です。この思考は、適度であれば物を大切にする良い習慣にもつながりますが、度を超すと不要な物を溜め込んでしまう原因となります。特に、過去の貧困体験や物の不足を経験した世代、あるいは極端にもったいない精神が強い人にこの傾向が見られやすいと言われますが、現代社会でも多くの人がこの思考に縛られています。「いつか使うかも」という思考の背景には、いくつかの心理的な要因が考えられます。まず、「将来への漠然とした不安」です。将来何が必要になるか分からない、何かあった時に困らないようにという思いから、様々な物を手元に置いておこうとします。特に災害などが起きると、「非常時に役立つかもしれない」といった考えから、さらに物を捨てられなくなることがあります。次に、「決断を先延ばしにしたい気持ち」です。物を捨てるという行為は、一つ一つに対して「必要か不要か」という判断を下す必要があります。この判断に時間やエネルギーをかけたくない、あるいは判断を誤るのが怖いといった気持ちから、とりあえず保留にしてしまい、結果として物が溜まっていきます。また、「損失回避の心理」も関係しています。これは、何かを得ることよりも、何かを失うことの方をより強く恐れる心理です。「この物を捨てて、もし後で必要になったらどうしよう」という、「捨てることによって生じるかもしれない損失」を過度に恐れるため、捨てるという行動を選択しにくくなります。たとえ今必要ない物であっても、手放すことによって将来生じるかもしれない不便さを想像し、捨てるのをためらってしまいます。さらに、「過去への執着」も関係しています。過去の出来事や思い出に関連する物を手放すことが、過去の自分や思い出を否定することのように感じられ、捨てられなくなることがあります。物は過去の自分と現在をつなぐものとなり、手放すことが困難になります。
「いつか使うかも」思考の心理的背景