「重くて大きいものだから、粗大ゴミで出せば良いのでは?」。使わなくなった金庫を前に、そう考える方もいるかもしれません。しかし、結論から言えば、ほとんどの自治体で、金庫は「粗大ゴミ」として収集してもらうことはできません。その理由は、金庫が、単なる「大きなゴミ」ではなく、「処理困難物」という、特別なカテゴリーに分類されるからです。自治体が金庫を処理困難物として指定する最大の理由は、その「特殊な構造」と「材質」にあります。金庫は、盗難や火災から中身を守るために、非常に頑丈に、そして複雑に作られています。そのボディは、分厚い鋼鉄の板だけでなく、その間に、耐火性能を高めるための「コンクリート」や「気泡コンクリート」、あるいは、その他の特殊な耐火材が、ぎっしりと充填されています。これは、金属と、コンクリート(がれき類)という、全く性質の異なる素材が、一体化した複合製品であることを意味します。自治体のゴミ処理施設は、このような複合素材を、適切に分別・処理するための設備を持っていないのが一般的です。もし、無理に処理しようとすれば、焼却炉を傷めたり、破砕機の故障の原因になったりと、施設全体に深刻なダメージを与えかねません。そのため、金庫は、法律上「産業廃棄物」として扱われ、その処理は、専門の許可を持つ、産業廃棄物処理業者に委ねる必要があるのです。また、その「重量」も、大きな理由の一つです。家庭用の小型金庫でも、その重量は数十キロに及び、業務用ともなれば、数百キロを超えることも珍しくありません。通常のゴミ収集作業員が、安全に収集・運搬できる重量を、遥かに超えているのです。こうした理由から、金庫の処分は、自治体のサービスに頼るのではなく、その構造と危険性を熟知した、専門の業者に依頼するのが、唯一の正しい、そして安全な方法となるのです。
金庫はなぜ粗大ゴミで捨てられないのか