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金庫処分費用のリアルな相場と内訳
使わなくなった金庫、あるいは開かなくなった金庫。その処分を考えた時、多くの人が最初に直面するのが「一体いくらかかるのだろう」という費用面の問題です。金庫の処分費用は、その「サイズ」「重量」「種類」、そして「設置状況」によって大きく変動します。おおよその相場と、その費用の内訳を正しく理解しておくことが、適正な価格で、安心して処分を依頼するための第一歩となります。まず、費用の相場です。家庭でよく使われる、高さ50cm程度、重量50kg前後の「小型耐火金庫」の場合、処分費用の相場は、おおよそ一万円から二万五千円程度です。これが、企業の事務所などで使われる、高さ1m以上、重量100kgを超えるような「業務用金庫」になると、その費用は三万円から、サイズや重量によっては十万円を超えることも珍しくありません。では、この費用の内訳は、どのようになっているのでしょうか。主に、「基本料金」「収集運搬費」「処分費」、そして場合によって「特殊作業費」で構成されています。基本料金は、業者が作業を行う上での最低限の手数料です。収集運搬費は、金庫を搬出し、処分場まで運ぶための人件費や車両費で、金庫の重量や、搬出経路(階段の有無など)によって変動します。処分費は、金庫を産業廃棄物として、適切に処理するためにかかる実費です。そして、特殊作業費は、金庫が階段の上に設置されていてクレーン作業が必要な場合や、ボルトで床に固定されていて取り外し作業が必要な場合などに、追加で発生する料金です。広告などで「金庫処分三千円」といった安価な表示を見かけることがありますが、これは多くの場合、基本料金のみを指しています。電話で問い合わせる際には、必ず、これらの全ての費用を含んだ「総額」での見積もりを確認することが、後々のトラブルを避けるための、最も重要なポイントとなるのです。
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金庫はなぜ粗大ゴミで捨てられないのか
「重くて大きいものだから、粗大ゴミで出せば良いのでは?」。使わなくなった金庫を前に、そう考える方もいるかもしれません。しかし、結論から言えば、ほとんどの自治体で、金庫は「粗大ゴミ」として収集してもらうことはできません。その理由は、金庫が、単なる「大きなゴミ」ではなく、「処理困難物」という、特別なカテゴリーに分類されるからです。自治体が金庫を処理困難物として指定する最大の理由は、その「特殊な構造」と「材質」にあります。金庫は、盗難や火災から中身を守るために、非常に頑丈に、そして複雑に作られています。そのボディは、分厚い鋼鉄の板だけでなく、その間に、耐火性能を高めるための「コンクリート」や「気泡コンクリート」、あるいは、その他の特殊な耐火材が、ぎっしりと充填されています。これは、金属と、コンクリート(がれき類)という、全く性質の異なる素材が、一体化した複合製品であることを意味します。自治体のゴミ処理施設は、このような複合素材を、適切に分別・処理するための設備を持っていないのが一般的です。もし、無理に処理しようとすれば、焼却炉を傷めたり、破砕機の故障の原因になったりと、施設全体に深刻なダメージを与えかねません。そのため、金庫は、法律上「産業廃棄物」として扱われ、その処理は、専門の許可を持つ、産業廃棄物処理業者に委ねる必要があるのです。また、その「重量」も、大きな理由の一つです。家庭用の小型金庫でも、その重量は数十キロに及び、業務用ともなれば、数百キロを超えることも珍しくありません。通常のゴミ収集作業員が、安全に収集・運搬できる重量を、遥かに超えているのです。こうした理由から、金庫の処分は、自治体のサービスに頼るのではなく、その構造と危険性を熟知した、専門の業者に依頼するのが、唯一の正しい、そして安全な方法となるのです。